りっかりっか*フェスタ2016レポート

鑑賞した作品について語り合い、児童青少年のための作品を創る上でのお互いの哲学について理解し合うことができたのは素晴らしい経験でした。
Luanne Poh (シンガポール)

背景

私は今回、シンガポールナショナルアーツカウンシルの推薦とACO沖縄と国際交流基金アジアセンターのお招きにより、アジアTYAネットワークに参加しました。

アジアTYA(アジア児童青少年演劇ネットワーク)は、りっかりっかフェスタおよび13の東アジア、東南アジアのTYAフェスティバルによって形成され、りっかりっかフェスタを議長フェスティバルとして活動しています。今年、りっかりっかフェスタと国際交流基金アジアセンターは、 各地域でのTYAの現状についてアイディア交換や情報の共有を行うことを目的として、東南アジアから18人の参加者を招きました。これに加えて、国際児童青少年演劇協会(ASSITEJ)からイタリア、スコットランド、デンマークの代表も参加しました。

目的

私は現在、TYAのクリエイティブ・プロデューサーとして、シンガポールにおけるTYAの活性化を目指して活動しています。ですから、このフォーラムに参加し、アジアや他の地域で同様の考えを持って活動をしているパートナーたちと知り合うこととができた上に、この分野でのベスト・プラクティスを学ぶことができたのは、とても前向きなご縁となりました。

フェスティバルの間、様々なアクティビテイーやりっかりっかフェスタの環境が、私たちに互いに語り合う機会を与えてくれたことは、素晴らしい成果でした。

特に以下の方々との間に重要な出会いがあり、将来的な協力関係の可能性も生まれました。

1. ペーパームーン・パペット・シアター

ペーパームーントは以前から連絡を取り合い、お互いのTYA作品についても知っていましたが、りっかりっかフェスタに共に参加して、鑑賞した作品について語り合い、児童青少年のための作品を創る上でのお互いの哲学について理解し合うことができたのは素晴らしい経験でした。フェスティバルと¥ネットワーキングの場を通して、お互いに人を紹介し合い、志を同じくする他の関係者とも交流することができました。

2. Dalija Acin Thelander

『ベイビースペース』についてはこれまでも耳にしてはいたものの、作品を実際に体験するのは初めてでした。本当に素晴らしい体験でした!観客にとっても、アーティストにとっても、非常に素晴らしい作品だと思います。『ベイビースペース』のような作品の上演によって、現地のアーティストとの協働を実現し、地元の観客にとって文化的に共感できて、かつアーティストのコミュニティーにとっても有益な作品を制作する機会を創ることは、TYAコミュニティーへの素晴らしい贈り物であり、また先進的な試みでもあると思います。

3. BICT

創設まもないBICTと出会い、バンコクの皆さんの熱意と情熱に触れることができたのは、大きな喜びでした。この出会いのおかげで、困難に負けずに基盤を築き続けていくことの大切さと、自分がTYA作品を初めて創りたいと感じた時の(ほぼまっさらな)気持ちを思い出すことができました。またBICTの内容が、外国の作品や国内の作品、家族のためのワークショップ、関係者のためのフォーラムまで、多岐にわたっていることにも感銘を受けました。

また、BICTと国際交流基金の間のパートナーシップについて、特に国際交流基金がBICTに参加している日本以外の劇団に資金援助を行っていることを知ったのは、嬉しい驚きでした。先ほども述べた通り、まだどちらかというと未発達な状態にある東南アジアのTYAを活気づけ、成長させるために、志を同じくする人たちが惜しみなく助けの手を差し伸べていることを知り、励まされる思いでした。

4. クリエイティブ・スコットランド

スターキャッチャーズUKは、地方コミュニティーで児童青少年のためのオリジナル作品を創る若いアーティストたちに資金提供を行っています。スコットランドの多くの組織が彼らの活動を支援しており、クリエイティブ・スコットランドはそのひとつです。アーティスト援助のさまざまな面での「ベテラン」であるクリエイティブ・スコットランドに出会い、りっかりっかフェスタでスコテイッュ・フォーカスを実現したいという彼らの展望について知ることができ、嬉しく思いました。

主な学び

1.観客の年齢への配慮&観客への働きかけ

ラ・バラッカ・テアトロ創立者の一人であるロベルト・フラベッティさん(イタリア)と、ASSITEJセルビアの会長であるディアナ・デバウァックさん(セルビア)が指摘されていたとおり、TYA作品の創作、参加、推薦において、子供の認知発達は重要な要素です。

子供は、それぞれの認知発達段階において、ひとりひとりが完全な人間です。子供は大人の4分の1、あるいは半分の存在でしかないから、大人向けのものよりも質や価値の低い芸術作品を与えればいいということではないのです。作品が観客に正しく働きかけることができれば、子供たちも作品に参加してくれます。アーティストはエゴを脇において、作品の公演における「先生」のような存在である子供たちから学ばなくてはいけません。アーティストのエゴが強すぎると、彼らは子供たち、つまり先生の声を「聞く」ことができず、観客に正しく働きかけることができません。このように、TYAにおいては観客と作り手が親密に関わる必要があり、そのため作り手側には多くが求められます。ここからも、TYAは子供のための遊びにすぎないという思い込みが間違っていることがわかります。

2.経済的な側面

TYAでは観客と作り手が親密に関わる必要があるため、経済的な妥当性が問われることが多くあります。

しかし、観客の年齢に即した、真に質の高い作品を創ることができれば、その作品はその時々の「流行り」を超え、 レパートリーとして残るはずです。また、TYAは文化的環境のひとつの要素として進歩的な価値があり、社会的利益をもたらすという視点から、芸術産業以外からの支援やパートナーシップを募ることもできます。

今後について

私たちは、アジアTYAネットワークの一員として、アジアのTYA関係者の皆様と今後も交流し、各国の実績あるパートナーの皆様からベストプラクティスを学ぶことを楽しみにしています。また、ACO沖縄との協力のもと本プロジェクトの第二段階に参加し、シンガポールの観客のためにより活気あるTYA環境を育てていくことを目標として、自国のアーティストをどのようにサポートできるかを考えていきたいと思います。そして、アジアのパートナーの皆様に、私たちの経験と作品についてお伝えしていきたいと思います。

りっかりっか*フェスタ参加者
Luanne Poh
シンガポール
インディペンデントクリエイティブプロデューサー
None
りっかりっか*フェスタ参加者