りっかりっか*フェスタ2017レポート

今回の実り深く刺激的な旅は、児童青少年のためにより質の高い作品を作っていこうという気持ちを強く高めてくれました。
Linda Ang (マレーシア)

りっかりっか*フェスタ レポート

初めてりっかりっか*フェスタに参加しました。このような機会に恵まれたことにとても感謝しています。自分自身にとって大きな出来事になりました。りっかりっか*フェスタ2017には、8ヶ国から26作品が招待され、80公演が行われました。私はそのうち、15公演を観ることができました。

TYA(児童青少年演劇)はさまざまな年齢層をターゲットにします。0-3歳向けの赤ちゃんのための演劇もあります。私にとってはとても新鮮な体験でした。その中でも一番自分にとってインパクトが大きかったのは、アジアTYAネットワークのミーティングと、世界へつながるTYAクリエイションシリーズでした。

最初のTYA作品は、ドイツの『石のうた』でした。開演前、観客みんなに石が配られ、作品へのチケットとして使われました。石はとても特別な音を作り出し、作品の中で美しいメロディーになって行きました。それぞれの石には名前がついていて、それぞれの石特有の音があると知りました。ラベルを貼られた石は、俳優と同じように舞台上を動き回りました。この作品の中で、私は母なる大地の声を聞きました。カンパニーがこの200kgの石と旅をしていて、その中には沖縄の石も入っているということにとても感動しました。この作品で感じたことは、母なる大地の声はハーモニーのメロディーであり、さまざまな国の人々をつなげるものだということでした。終演後、子どもたちは舞台上に上がってドラムスティックで石を叩いてみることができました。それによって、それぞれの石の柔らかく優しい音を聴くことができました。この作品は2歳以上向けのものでしたが、声のボリュームが大きすぎず、複雑すぎず、ちょうど良いものだったと感じました。子どもたちに、自然の声を聴かせられる作品でした。

もう一つ、私がとても好きだったのはデンマークの『ウィンド』でした。天井からさまざまな小さな物が吊るされていました。上演が始まり、「風を見ることはできない。でも感じることはできる」と俳優が言ったのが良かったです。それを言ってすぐ、俳優は走り出し、その動きが風を作りました。夏の爽やかな風が暴れまわる嵐に変わる緊張感を感じ、舞台の魔法だなと思いました。嵐が過ぎ去ってやっと、私も緊張を解くことができました。

もう一つのデンマークの作品『アゲイン』は、6ヶ月から4歳の子どもたちのための作品でした。開場を待っているときに、俳優がやってきて観客に紐を渡しました。観客はみんな一緒に紐を持って劇場に入りました。その紐を使って作品が始まり、終わるときには紐を丸めてボールにしました。このボールは全てが始まり、そして終わるサイクルを表していました。

りっかりっか*フェスタのテーマは”ノンバーバルの児童青少年演劇”です。これはとてもパワフルで、ユニバーサルだと思いました。

『アダムズワールド』はドイツの作品でした。俳優が『ママはだれ?』と問いかけるシーンがありました。

 俳優:  ママは料理を作ってくれる?

 アダム: エン、エン(意味:いいえ)

 俳優   ママは家事をしてくれる?

 アダム: エン、エン(意味:いいえ)

 俳優:  ママはあなたのためにたくさんのことをしてくれる?

 アダム: エン、エン(意味:いいえ)

  — ママがアダムを抱きしめる —

 アダム: (大きく叫ぶ)ママだ!

このシーンはとてもパワフルでした。抱きしめるという行為が、母親とはなんなのかという問いかけへの回答なのです。それは、愛であり、暖かさです。

チリの作品『アナのはじめての冒険』は、良い音楽と観客とのやりとりで楽しい作品でした。『グッバイ、ミスターマフィン』は、とても意味の深い作品で、児童青少年のための質の高い作品でした。

アジアTYAネットワークミーティングでは、アジアの国々での状況について話をしました。私たちは皆、劇場に行くよりもインターネットを楽しむ若い世代の問題に直面しています。この問題はかなり深刻で、私は若い才能ある人たちを講演に参加させることを提案しました。例えば若い演出家、若い脚本家、若い俳優などです。彼らが演劇に深く関わるようになると、新しい若い観客もやってくることになります。彼らの友人やSNSのネットワークが影響力を持っているからです。

私は常に、私たちは若い世代の視点を必要としていると信じています。例えば、フィリピンからの参加者のロジャーが「子どもたちは大人が思うよりずっと賢いというけれど、それならばなぜTYAという分野が必要なのか?」という質問をしました。これは私たち全員にとって非常に良い質問でした。

デンマークの『ウィンド』を上演したシアター・マダムバッハは、『HJEM(HOME)』という小さい本を出版しました。最後のページに記されていた一文は”故郷は家以上のもの”というものでした。これを読んで児童青少年演劇のことを思いました。児童青少年演劇は、ただのお芝居以上のものである。今回の実り深く刺激的な旅は、児童青少年のためにより質の高い作品を作っていこうという気持ちを強く高めてくれました。

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Linda Ang
マレーシア
The Play Haus
ストーリーテラー
りっかりっか*フェスタ参加者