りっかりっか*フェスタ2017レポート

私たちの知識や経験、テクニックを共有しあい、アジアのTYAの独自性を見つけていきたいです。
Suchawadee Phetpanomporn (Cherie) (タ イ)

アジアTYAネットワーク レポート

2017年7月24〜30日のアジアTYAネットワークプログラムに参加した経験は、児童青少年演劇の分野で活動するアジアのアーティストとして力を与えてくれるものでした。このプログラムはりっかりっか*フェスタという日本の素晴らしい国際児童青少年演劇フェスティバルの中で行われました。この10日間で、私はアジアの経験豊富なTYAアーティスト、専門家、研究者と出会い、話をすることができました。講師として、そして青少年の観客のため、また若い俳優と仕事をするアーティストとして、私の国におけるTYAの状況を見つめ直す、刺激的な時間となりました。

10日間の中、アジアTYAネットワークプログラム、アジアTYAミーティング、世界へつながる

TYAクリエイションシリーズ、国際TYAシンポジウムなどのイベントの中で浮かび上がって来たトピックは、タイとアジアのTYAの現状を考えさせてくれました。以下の3つのトピックがこれらのセッションから出て来ました。

  1. 保護者ではなく、子どもたち自身の選択によって劇場に来てもらうにはどうしたら良いか?
  2. どうやって助成金団体にアプローチしたら良いか?
  3. アジアのコンテキストの中の、青少年のための文化を超えたパフォーマンス

まず、アジアのTYA実践家たちとのディスカッションの中で、最初の2つのトピックについて考えました。韓国では、ティーン世代は劇場に行きたがらず、多くの国で子どもたちは親に連れられて劇場にやってきます。タイでは少し状況が違います。タイでは十分でない、子どもの成長を助ける創造的な活動を求め、中流階級の親と一緒に10歳以下の子どもたちは劇場にやってきます。若いタイの観客が芸術的なイベントに参加できる機会を増やすため、昨年バンコク国際児童演劇フェスティバルが初めて開催されました。一方で、小さな子どもたちのための演劇が少なく、ティーンのための演劇はそれ以上に少ないということもわかってきました。タイのほとんどのTYA作品は、大人にとっては関心のない内容だったり、小さな子どもたちにもあまり子どもたちに関係ないものだったりします。そして、ティーンのための演劇は足りていないと言えるでしょう。しかし、それはティーン世代が劇場に行かないという意味ではないのです。もし彼らにとって関心のある内容であれば劇場に行きたいのです。タイのティーンエージャーには、観客として劇場に行くよりも、劇団やコミュニティシアターに参加する人たちもいます。

次に、アジアTYAミーティングの中で、どのように助成団体と向き合うかということが大きな課題となりました。そして私たちはそれに対する答えを見つけることはできませんでした。しかし、教育や、社会問題へのアプローチとして演劇を活用することで助成金を得られる方法があるのではないか、と指摘したメンバーもいました。デンマークのシアターセンターのディレクターであるヘンリック・コーラーは、7月28日にひめゆりピースホールで開催された国際TYAシンポジウムのなかで”演劇作品は芸術を生み出すものであり、教育の道具ではない。子どもたちは芸術に参加しなければならない。子どもたちによる芸術は、彼らの人生のエッセンスになる。彼らは彼ら自身で選択するのだ。”と述べました。演劇が力のある芸術であり、児童青少年に力を与えるだけでなく、大人たちにも、舞台上のキャラクターに”もしも〜だったら”という体験を重ねることで世界を理解させることができるという点には合意します。芸術的なイベントに参加することで、子どもたちは自分自身の心を通して、自分自身の学びを作り出します。こういった意味で、芸術や演劇を教育の道具にする必要はないと考えます。残念ながら私のタイでの経験はこれに矛盾します。発展途上国である結果として、ほとんどの助成団体はタイ国内における人材育成をミッションに掲げています。こういった団体は、児童青少年に芸術を体験させることではなく、芸術を使って何かを教えたり、何かに対する認識を高めたりするプロジェクトを支援します。演劇は学びのツールとして効果的ですが、アーティストの仕事は教えることではありません。私は自分自身に、どうやって私たちは社会に対して、小さい頃から芸術に関わること— 純粋な芸術であれ応用芸術であれ—への意識を高めることができるだろう、と問いかけました。

みっつめに、アジアTYAネットワークの、作品を観た後のディスカッションを通して、メンバー全員がそれぞれ非常に強い芸術的な視点を持っていることに気づかされました。これはこのイベントで一番有意義な体験でした。アジアにおける、文化を超えたパフォーマンスを作るというアイディアが、私たちアジアのTYAアーティストがアジアの異文化間のメソッドを見つけるのに良い方法であるのかもしれないと感じました。全世界共通であるかのように思っていた西洋のベッドタイムストーリーが、そうでないことに気づかされました。それは、演出家が、誰もが知っている3つの物語をもとに作ったと話した『スリーリトルソング』の終演後のディカッションで、カンボジアのHoern Buntheoeunさんが言ったことによるものでした。彼は、元々の西洋の物語を全く知らなかったため、グループを驚かせたこのホラーストーリーを自分自身で解釈していました。この時、異文化プロジェクトというのが、現代のアジアの子どもたちも親しみがあるようなアジアの物語やおとぎ話、民話、伝説などを探求する一つの方法なのではないかと感じました。さらに、これはアジアの子どもたちが、アジアの中で共通の感覚を得て、社会として団結するためのツールにもなり得ると思うのです。

タイのアーティストとして、この3つのアイディアは、自分の活動がより自分の国の状況に応えるものにするためにいろいろなことを考えさせてくれました。タイではまだ十分でない、子どもたちやティーンのための演劇を作っていきたいです。アジアTYAネットワークのメンバーと、異文化の演劇プロジェクトをできる機会があることを願っています。そこで私たちの知識や経験、テクニックを共有しあい、アジアのTYAの独自性を見つけていきたいです。さらに、児童青少年のための演劇を創作するだけでなく、このアプローチを、アジアの若い人々が演劇を使って関係性を深めていくようなプロセスに応用したいとも考えています。それによって、アジアの次世代がより強いものになり、ただ西洋の影響を受け入れるのではなく、自分自身の学びを作り出せるような新しい観客を劇場に迎えることにもつながるでしょう。

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