アジアTYAネットワーク - 沖縄、2018

このネットワークはまだ始まったばかりで、その可能性は巨大である。
Alex Byrne (イギリス)

私は2018年7月に沖縄で開催された、りっかりっか*フェスタによるアジアTYAネットワークプログラムに幸運にも参加させていただいた。私自身は、フェスティバルのゲストとして、また私の児童青少年との共同制作活動について発表するパネルとしてフェスティバルに参加した。

ミーティングやディスカッション、セミナー、作品を観てからの批評的ディスカッションが非常によく企画され、刺激的で、応用しやすいものになっていると感じた。”応用しやすい”と言ったのは、私自身このネットワークプログラムでの経験や視点を、ヨーロッパでの自分自身の活動やネットワークで活用しようとしているからだ。このような多様で興味深いアーティストや文化関係者の集合と交流を可能としたりっかりっか*フェスタの主催者の皆さんの功績は素晴らしい。

観て、そして話す・・・舞台作品

りっかりっか*フェスタは世界各地からのさまざまな質の高い作品を上演しており、アジアTYA参加者はその作品を鑑賞し、また終演後にその作品を作った、もしくは演じたアーティストとディスカッションを行うことができた。これがなんと素晴らしい贈り物だったことか!私たちはかなり大きなグループだったため、時には2つのグループに分かれて作品を観ることもあったが、かならずその作品について話をするために集合した。このプロセスは非常に良く準備され、サポートされたものだった。私たちはスコットランド、日本、ロシア、ウクライナ、ドイツ、デンマークの作品を観た。さまざまな背景、伝統、訓練を持つグループとして、それぞれの視点や考え方を共有できたこの機会はとても貴重な体験だった。共通言語は英語であり、私自身にとっては良いことだったが、おそらく何名かの参加者にとっては挑戦だったと思う。どのように解決するのが良いのかはわからないが、時にこれがフラストレーションの要因になっていたように感じる。通訳や正確さの確認は複雑で深いディスカッションをスローダウンさせてしまうことがある。限られた時間とスペースの中で、参加者と主催者は非常にうまくこれを進めていた。参加者の背景は非常にさまざまであり、かつそれぞれが共通した活動への強い情熱を持っていることから、私たちは作品についていくらでも話をすることができたし、さまざまな視点について話し合うことができた。作品とクオリティとプロセスについてのディベートには何度も興味をかきたてられた。今後のネットワークの目的として、こういったディベートの継続というのはひとつ考えられるのではないだろうか。

アートと都市、文化の包括・・・セミナー

プログラムの一部は、いくつかのキートピックについての詳細なプレゼンテーションとディスカッションに費やされた。私自身も、イギリスとヨーロッパでNIEが行なっている活動、特に子どもたちとの創作活動とそのプロセスについて短い発表を行った。

この部分のアジアTYAネットワークプログラムは非常にすばらしく企画され、また構造立てられたものになっていた。助成金やネットワーク、包括性、国や地域の課題や違い、素晴らしい実践の事例、文化政策、ネットワーク構築など、文化関係者にとって重要なテーマを扱う幅広いプレゼンテーションが行われた。今後、このディベートを、これらのセッションの中で何度も議論されたキャパシティとクオリティの間の葛藤についてより深く探求できるようなものに発展させていき、世界のTYAを巻き込んだディベートとしていけると興味深いと思う。

これらのイベントでは、さまざまな経験や事例が幅広い観客に向けて共有され、参加者の間でいくつかの非常に活発で深い議論を巻き起こした。

最後のセッションでは、これまでの議論や対話で出て来たものを総括し、ネットワークの次の一歩を参加者とともに考えた。これまでの数年間のネットワークの活動により構築された強固な基礎と繋がりの上に今回さらに重ねられたものが、おそらくこれからの何年かでアジアTYAネットワークとして花開き、よりネットワーク自体をしっかり定義できるようなものにしていくだろう。

今後のネットワークについての議論

フェスティバルの、そしてこのネットワークのゲストとして、この部分の議論にはそこまで大きく踏み込むことはしなかった。イギリスやヨーロッパのYTAネットワークのいくつかの考えや経験を共有した。アジアTYAネットワークは、助成金と構造において転換点を迎えているように感じた。地理的な距離や、国によって助成金の環境が大きく異なることは、ネットワークが継続していくことを容易にはしないだろう。しかし、沖縄で出会った何名かの人たちの興奮と献身を見るに、前に進む道は拓かれていくだろうと感じる。私の考えでは、このネットワークが必要とするのはその目的と境界線をより明確に定義することにある。このネットワークが、大きく異なる伝統や理論をどう取り込んでいけるか、という重要なディスカッションも行われた。

今後重要になる疑問やプロジェクトは以下が考えられる。

・アジアのコンテキストによるTYAの定義

・児童青少年「のための」演劇だけでなく児童青少年「との」「による」演劇の包括、そしてそのアプローチや実践の間の関係性

・児童青少年のための演劇、教育における演劇、クリエイティブラーニングとしての演劇や同じネットワークで扱いきれるか

このネットワークはまだ始まったばかりで、その可能性は巨大である。2018年のミーティングに参加できたことは大きな喜びであり、光栄なことだった。

Asian TYA Network
Alex Byrne
イギリス
New International Encounter

芸術監督