芸術と観客 “私たちはおなじところにいる”

文化芸術の文化で新しい世代のリーダーを作っていくことは、未来に向けた動きである。
Sokny Onn (カンボジア)

“児童青少年の観客と社会は、芸術と文化に対して非常に重要な役割を果たす”、

そして

”芸術と文化は、児童青少年の観客と社会に対して非常に重要な役割を果たす”

 これまで私は、何度かネットワークプログラムやフェスティバルに参加して来た。これまでの経験と、今回の経験における、つながっているという感覚は異なるものだった。それは、りっかりっか*フェスタ(正式名称:国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ)とアジアTYAネットワークプログラムは、東南アジアに非常に直結するものだったということだ。

 アジアTYAネットワークは、フェスティバルにおいてネットワーキングプログラムを開催したが、フェスティバルはアジアに共通する文化的な印象を持っていた。アジアの国々が児童青少年のための演劇についてこんなにも共有し、お互いに学び合うことがあるということは驚くべきことだった。

 また、児童青少年演劇の分野において進んでいる日本(沖縄)のようなアジアの国でノンバーバル作品にフォーカスしていることも印象的だった。カンボジアではまだこの概念すらない。しかし、同時に嬉しかった。ほとんどのパフォーマーが耳の不自由なEpic Artsの作品はノンバーバルだからである。私たちは全年齢の幅広い観客のために公演を行なっている。しかし、児童青少年に特化した作品はまだつくったことはない。これは私の情熱に新たに加わったもので、今後ぜひ取り組んで若い観客と共有していきたい。

 アジアTYAネットワークのフォーマットは非常に地に足のついたものだった。まずは一緒に遊び、子ども時代の食べ物を食べ、ゲームを楽しんだ。お互いに自分たちのストーリーや経験、活動内容、コミュニティについて共有した。私たちは笑い、分かち合い、お互いの懸念や希望を聞きあった。また、りっかりっか*フェスタの歴史と素晴らしい実践についても知ることができた。

 このフェスティバルの歴史は非常に興味深い。沖縄戦60周年に、「子どもたちと一緒に平和を求めるフェスティバル」として始まった。この国際児童青少年演劇フェスティバルは1994年に沖縄中部でいくつかの自治体でアジアではじめての国際児童青少年演劇フェスティバルとして開催された。

 私にとって、これはすばらしいロールモジュールとなる歴史だ。政治的な理由が、このような大きなインパクトのあるフェスティバルとなり、芸術を通して子どもたちやその家族に平和をもたらすという点において。特に、これが自治体やポリシーメーカー、アーティスト、プロデューサーによって行われたというのは非常に賢く、設立メンバーが平和的なやり方で問題解決に取り組むために芸術を選んだというのはすばらしい。より詳しい情報は、こちらのページで見ることができる。http://2017eng.nuchigusui-fest.com/about.php.

アジアTYAネットワークとりっかりっか*フェスタで感銘を受けたこと

 観に行った公演はすべて満員だった。95%は地元の観客で、児童青少年と家族だった。私の国では、非常に稀なことである。

 すべての作品は児童青少年とその家族にとって楽しみやすいものだった。すべての年齢、また、耳の聞こえない人や、日本語を話さない人でも本当に楽しめる作品だった。会場は地元の市場や教会、そのほかの文化的な場所にあり、会場自体が地元の人たちとつながっていた。

 公演にはさまざまなタイプがあった。エンターテインメント性が高いもの、教育的なもの、おもしろいもの、そして挑戦的なもの。ほとんどの作品は文化的なゲームをつかって観客との関わりを持っていたということも付け加えておきたい。

 TYAミーティングはリラックスしたものだった。インフォーマルでフレンドリーでありながら、芸術文化における重要なトピックについてディスカッションを行なった。参加者が皆親密な関係性を作りやすいようにデザインされたプログラムだった。

フェスティバルとアジアTYAネットワークについての個人的な考察

・りっかりっか*フェスタの上演作品

 約70%は児童青少年の観客が楽しみやすい作品だったが、30%ほどは向いていない、もしくは挑戦的すぎるものだった。

 ポストトークが、もっと児童青少年の観客やその家族も参加しやすいものになると素晴らしいだろう。

 障がいのある若い観客がほとんど公演を観に来ていなかったのは驚きだった。次回のフェスティバルでは、障がいのある児童青少年にフェスティバルに参加する働きかけができればおもしろいのではないかと思う。フェスティバルにとっても、また新しい価値を与えてくれるはずだ。

・アジアTYAネットワーク

 TYAについてのプログラムは非常に役に立った。参加者全員がそれぞれの活動分野における実践や挑戦などを共有することができた。その中でも、特にお互いに聞き合うことが多かったのは、それぞれの国において政府の助成金システムがどうなっているのか、ということだった。東南アジアからの参加者といっても、国によって政府の構造はまったく違うこともある。次回のTYAミーティングではぜひトピックのひとつに加えてほしい。

 東南アジア全体で、ポリシーメーカーと政府がネットワークを組んでつながっている。時に、芸術や文化の活動は政府やポリシーメーカーとの強い連携が必要になるが、システムや構造、文化の違いにより、その関係性を作るのが難しい国もある。もしTYAネットワークのメンバーや主催者が各地域のキーとなる人の情報を共有することができれば、それは大きな財産となるだろう。

 アジアTYAネットワークは東南アジアの国々にとって本当に重要なものだ。助成金の状況があるのは理解しているが、主催者とメンバーで、継続していく方法が見つけられることを願う。東南アジアにはまだこの素晴らしいネットワークとフェスティバルを必要としている国がたくさんあるのだから。

何を持って帰るか

 りっかりっか*フェスタとアジアTYAネットワークは、児童青少年のための演劇やダンス作品を作ることについて非常に大きなインスピレーションを与えてくれた。りっかりっか*フェスタは若い年齢から児童青少年に芸術を届けるための賢い戦略と洞察力をもっている。文化芸術の文化で新しい世代のリーダーを作っていくことは、未来に向けた動きである。

 

この考え方とモデルはとても刺激的で、自分にできるかぎりの規模で、私の国でもこういったイベントを行いたいと思う。障がいのある、ないに関わらずすべての児童青少年とその家族が参加できるものにしたい。Epic Artsの価値や、個人的な信念をこえて、芸術を通して社会包括を訴えていきたい。Epic Artsについてはこちらのウェブサイトを参照:www.epicarts.org.uk

 芸術は障がいのあるないに関わらず、子どもたちの教育と成長においてとても重要な役割を果たすと信じている。芸術はすべての人間にとって、さまざまなアイディアや考え方、創造性、想像力、平和、声、心の糧への扉をひらくツールである。

Asian TYA Network
Sokny Onn
カンボジア
Epic Arts Organization
カントリーディレクター