りっかりっか*フェスタ2016レポート

アジア全域から集まった演劇関係者と一緒に、アジア諸国の多くで上演されている青少年向けの作品について探っていく、また同時に待ち受けている未来についても議論できる、またとない機会でした。
Hugh Brown (カンボジア)

下山久氏・宮内奈緒氏・丹治はるか氏から、日本の沖縄で開催された「りっかりっか*フェスタ 2016」にご招待いただき、出席できたことをたいへん嬉しく思っています。ご招待いただいた目的は、私がカンボジアと英国で行ってきた取組みをご紹介させていただくこと、そして、東南アジアで児童青少年演劇 (TYA) に取り組む演劇関係者をつなぐことを目的とした2つの会議に参加させていただくことでした。また、カンボジアのPHARE CIRCUSのYa Rathaを私の同行者として招いて、TYAと質の高い劇作品や議論で盛り沢山で活気あるりっかりっか*フェスタを直接体験してもらうことができたのも、追加で嬉しい点でした。

アジアTYAネットワーク

オープントーク『アジアTYAの今とこれから』

アジア全域から集まった演劇関係者と一緒に、アジア諸国の多くで上演されている青少年向けの作品について探っていく、また同時に待ち受けている未来についても議論できる、またとない機会でした。この会議の司会進行はシンガポールのCaleb Leeが見事に務めてくださいました。まず、参加者は小グループに分かれ、各国で目立つ取り組みを取り上げることになりました。私のグループでは、カンボジア、ベトナム、ラオス、タイで何が起こっているかを聞くことができましたが、こういった国々には、Phare、ベトナム青年劇場やバンコク国際児童演劇祭 (Bangkok International Theatre for Children Festival) といった注目に値するカンパニーが確かに幾つかあります。こういったカンパニーが活発に活動している一方で、ラオスやタイの人形劇など伝統的な芸術の世界もしっかりとしています。カンボジアなどの地域では多くの作品が観光業界向けですから、Rathaにとっては子供向けに特化して行われる作品について見聞きできるのは面白かっただろうと思います。発見した内容を紹介した後に、自由な議論が進行し、参加者がアイディアや体験を共有しました。仕事上の関係をより緊密に発展させ、TYAに参加する人々を増やすことによって、地域全体に大きな利益がもたらされることは明らかでした。

アジアTYAネットワーク

アジアTYAネットワーキング

このセッションは、TYA参加者がそれぞれの地域での取組みについて短いプレゼンテーションを行う機会でした。各自の持ち時間は4分しかなかったものの、カンパニーや参加者それぞれの経験を理解するには十分でした。参加者それぞれの取組みについて聞くことができるのは素晴らしいことでしたが、ひょっとすると、この時間をオープントークに先立って、週のより早い段階に設定した方が良かったかもしれないと感じました。けれども、他のプロフェッショナルとつながることができたのは非常に価値があり、実りが大きい機会となりました。また、参加者みんなの体験や、それぞれが体験を通じて学んだ教訓を聞くことができ、非常に大きい刺激を受けました。

ベルギーTYAフォーラム

もう1つ私が参加した素晴らしい会議はベルギーのTYAについてでした。ベルギーは地理的な位置が非常に独特な国です。地理的な位置が言語的にも社会政治的にも国民に影響を与えています。こういった側面が資金提供に影響を及ぼし、結果、国内のさまざまな場所での劇作品制作にも影響があります。しかし、ベルギーのTYAシーンは確かにしっかりしており、ベルギーが独特のスタイルで作品を生み出してきていることは明らかです。ベルギーからは現代的で実験的な作品が生まれています。劇の上演に至るまでの開発段階を大事にしており、アーティストたちが子どもたちなど地域の人々と密接に関わっていると聞くことができたのには喜ばしい思いがしました。困難だがやりがいのある社会課題をテーマにした作品に取り組む際には、こういった取組みが非常に大切だと私は信じています。フェスティバル中には、日本とベルギーの友好関係が祝われており、ベルギーからの作品を複数鑑賞することができました。

アジアTYAネットワーク

フェスティバルと上演作品

会期中の1週間ずっと、世界中から集まった本当に様々な作品を鑑賞することができたのは素晴らしいことでした。スタイルも内容も、非常に幅広く、優れたものでしたが、私の個人的なお気に入りの3作品はY2Dプロダクションズの「レオの小さなトランク」とエル・パティオ・テアトロによる「ア・マノ」、そして、人形劇団ひとみ座の「かわいそうなぞう」でした。上演された作品を全て鑑賞することができ、プロデューサーやディレクター、そして出演者の何人かに会えたのは非常に大きな特権でした。フェスティバルで上演された作品の幾つかをカンボジアとアイルランドに呼ぶことができればとRathaと私は思っています。りっかりっかでの体験は、カンボジア初の児童向け演劇祭を開催するという夢を実現する上で、必ずや私たちの力になるでしょう。

最後に

素晴らしい1週間でした。まず、フェスティバルディレクターの下山さんに、また宮内さんと丹治さんに御礼申し上げたいと思います。私が新しい同僚のRathaとともにりっかりっかフェスティバルに来ることを可能にしてくださいまして、ありがとうございました。また、国際交流基金の惜しみないご支援にも感謝いたします。こうした皆さんを始め、多くの方々がフェスティバルのためにたいへん骨を折り、一生懸命に取り組まれていらっしゃったことに、御礼申し上げます。おかげさまで、私の日本初訪問はストレスのない、けれども生産的なものとなりました。りっかりっかに対して100%賞賛と尊敬の念を感じながら、アイルランドに戻ります。また、沖縄滞在中にお会いした日本の多くの人々にも同様の気持ちでおります。非常に歓待していただきました。このことは絶対に忘れないでしょう。そして、もちろん、東アジア・東南アジア全域から集まった私の新しい友人や同僚にも感謝しています。皆さんに対して、そして皆さんが行われている大事な取組みに称賛の念を感じています。継続して連絡を取り合い、アジアを始めとした地域でTYAを確実に成功に導き、また革新していくという共通の目標に向かってともに進んでいくことが大切だと私は思っています。私たちの協力はまだ始まったばかりで、ATYAなどの方法を通じ、どうにかして、勢いを持続させ、この短期間で達成できたことを継続させていかなければなりません。私たち全員に共通している点は多くありますが、大事なのはそれぞれユニークなスキルを持っており、互いのプロジェクトや将来の計画の役に立つということです。
皆さんのご活躍をお祈りするとともに、カンボジアでお迎えできる日を楽しみにしております。ひょっとすると、北アイルランドでお会いできるかもしれませんね!
未来に進んでいきましょう。

ヒュー・ウィリアム・ブラウン
2016年7月30日
日本 沖縄
www.wowartscambodia.com

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りっかりっか*フェスタ参加者
Hugh Brown
カンボジア
WOW! Arts Cambodia
芸術監督
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