りっかりっか*フェスタ2016レポート

私にとって、りっかりっかフェスタは多くの参加者との素晴らしい出会いの場となりました。
Sigmund Roy Pecho (フィリピン)

未来の世代での実りのために、いま種を植える

種はすでに蒔かれました。私たちはこれから、地道に水をやり、苗を守って、実りの日が訪れるまでこれを育てていく責任を受け入れなくてはなりません。これを、これからアジアTYAの目的と活動をさらに高めていくためのインスピレーションとしていきましょう。

20167月の最終週、アジア児童・青少年演劇ネットワークは、子供のための演劇作品の祭典を1週間にわたって開催しました。献身的な演劇関係者たちの溢れんばかりの熱意と決意によって、りっかりっかフェスタの開催が実現しました。このフェスティバルは、経験に基づき、子供たちが演劇に触れることのできる場をふんだんに提供し、彼らと演劇、そしてアートとの出会いを実現することを目的としています。

世界のそこここで、多くの人が、演劇とアートの可能性を信じています。その可能性とは、子供や若者の良心を呼び起こし焚き火をくべることであり、つまりは地球に生きる次世代のために光を灯すたいまつを受け継ぐことです。このたいまつが、私たちがこれから育てていこうとする子供たちの道標となります。

このレポートは、私がりっかりっかフェスタでの体験に刺激を受けて記した自伝のようなものです。フェスティバルで起きたことだけでなく、りっかりっかフェスタとアジアTYAが「若い観客と作り手のための演劇」という哲学を追求する上で役立つかもしれない意見を述べたいと思います。

私の考えのうち、主なものをこのレポートでお伝えします。

フィリピンにおける子供のための演劇

729日の会議中に行われたフィリピンの仲間たちからの報告は、たいへん素晴らしく、興味深いものでした。私は、パペットによるアートの可能性を追求することで子供のためのパフォーマンスに取り組んでいるTeatrong Mulatng Pilipinasの一員でありながら、フィリピンの他の(アート関連の)子供のための団体が、どのような活動やプロジェクトを実施しているか、ほとんど知らなかったことに気づかされました。Teatrong MulatAnino Shadowplay Collectiveは、パペット(Aninoの場合は影絵)についてのワークショップを開催し、Tanghalang PilipinoSipat Lawin Ensembleは、劇団にTYA専門の部門を設け、若い観客のための活動を行っているとのことでした。特にSipat Lawin Ensembleの実施しているプログラム、Theatre in a Back PackProject Banigには、学ぶべき点が多く見受けられました。ほとんどの参加者にとって、このようなプログラムについて知るのはこれが初めてでしたが、今回の報告を聞いて大きな可能性を感じました。Theatre in a Back Packはワークショップとして、Project Banigストーリーテリング・プロジェクトとして実施されているということでした。ただし、私はこの2つのプログラムについては限られた知識しかなく、詳細を説明することはできません。一方で、Tanghalang PilipinoTeatrong Mulatと同様にUNICEFとの共催で若者のためのワークショップを開催しています。Tanghalangは思春期を対象としているのに対し、興味深いことにTeatrong Mulatは、超大型台風ハイエンの被災地で、保育士を対象とした活動をUNISEFと共に行っています。

この他特筆すべきプログラムとして、フィリピン政府によるNational Festival of Talentsや、PETAChildren Arts Festivalがありました。

このように、子供のための演劇に関連したプログラムは多数存在していますが、そのほどんどは期間が限られたものです。今後の課題は、このような取り組みをどう維持していくかだと考えます。

疑問点

フィリピンと同様に、多くののASEAN諸国で児童・青少年のためのフェスティバルやワークショップが開催されています。アジアTYAメンバーとゲスト参加者の議論を聞きながら、私はりっかりっかへの提案として多くの疑問点を書き留めました。こうした疑問点について、フェスティバルの計画や運営方法を通して、しっかりと消化し答えていく必要があると思います。

1.究極的には、観客に関する懸念が、フェスティバルを開催する上で重要な要素となります。フェスティバルを運営する上で、私たちはどのようなオーディエンスシップ(観客のあり方)を育てていきたいのでしょうか。

2.フェスティバルの最近の傾向として、「コラボレーション」が頻繁に実施されています。フェスティバルの開催中、開催時期外、またその範囲内外で実践できるコラボレーションの形として、他にどのようなものが考えられるでしょうか。

3.研修プログラムは、アイディアや文化、伝統を交換する上で非常にダイナミックな方法です。これをどのように広げていけるでしょうか。

4.オーディエンスシップの強化とは、何を意味するのでしょうか。

5.プロ精神を強化すべきという指摘がありました。しかし、多くのフェスティバルが金銭的な問題を抱え、ボランティアと善意に頼らざるをえない状況で、具体的にどうすればそれが実現できるのでしょうか。フェスティバルのようなプロジェクトのための国家政策が必要ではないでしょうか。

個人的な見解

私にとって、りっかりっかフェスタは多くの参加者との素晴らしい出会いの場となりました。学びを分かち合い、オープンに議論する機会を持つことができました。フェスティバルは、参加者にとって多くの作品を観る機会となり、その結果としてスキルを本質的に向上させる機会となることができます。そのような基本的な成果に加えて、アーティスト同士のコミュニティーを構築することは大きな喜びであり、フェスティバルの非常に刺激的な側面のひとつです。これが後に、別の形でのコラボレーションや発見につながり、最終的には観客にとっての大きな利益になります。

フィリピンにおける子供のための演劇は、まだ小さな苗のような状態であり、私たちはこれからこれを大事に育てていかなくてはなりません。いつか子供たちがその実りを収穫し、願わくは彼ら自身が何かを創作していく助けとしてくれるでしょう。私たちは必ず、この贈り物を子供たちに渡します。そしていつの日か、微笑みと共にその実りを収穫するでしょう。

Sigmund Roy G. Pecho

Teatrong Mulat ng Pilipinasメンバー

りっかりっか*フェスタ参加者
Sigmund Roy Pecho
フィリピン
Teatro Mulat ng Pilipinas
ジュニアパペティア
りっかりっか*フェスタ参加者