りっかりっか*フェスタ2016レポート

まだ新しいフェスティバルであるBICT Festにとって、国際的な場と文脈の中で紹介されること、そして世界中のアーティストや演劇関係者と関係を構築することができたのは、素晴らしい機会でした。
Adjjima Na Patalung (タ イ)

りっかりっかフェスタ2016が沖縄県那覇市で始まったそのわずか数週間前の6月21日から7月3日にかけて、バンコク芸術文化センターで、バンコク国際児童演劇祭(BICT Fest)が開催されました。この演劇祭の新任フェスティバル・オーガナイザーとしての視点から、りっかりっかフェスタでの体験を振り返り、レポートを記したいと思います。第1回となるBICT Fest 2016は、Arts on LocationとDemocrazy Theatre Studioのコラボレーションにより開催されました。タイ史上初めての、児童・青少年のための国際演劇フェスティバルです。BICT Fest 2016 は小規模なフェスティバルで、6カ国から集まった8つのプロフェッショナル作品の公演に加え、13の演劇ワークショップ、および6つのテーマについての国際パネルフォーラムが開催されました。

アジアTYAネットワーク

BICT Festは、東アジアの児童・青少年演劇(TYA)関係者としてりっかりっかフェスタに招かれ、アジアTYAネットワーキングのイベントに加えて、フェスティバルのプログラムや活動に参加しました。りっかりっかフェスタは、BICT Festが良き先例のひとつとして参考にする国際児童・青少年演劇フェスティバルのひとつであり、参加させていただくことができてとても光栄でした。また、りっかりっかはアジアで開催されるTYAの国際フェスティバルとして、最も成功した、歴史のあるもののひとつです。このようなインスピレーションに溢れるフェスティバルに参加し、体験することができ、私にとって素晴らしい機会となりました。

りっかりっかフェスタには、Pavinee Samakabutr(プロデューサー)とPinya Chookamsri(アシスタント・プロデューサー)とともに参加しました。私たちはバンコクを発つ前、りっかりっかのような成功を収めているフェスティバルの運営がどのように行われているのかを現場で学ぶこと、世界中から集まった作品を観て、現在のTYAの潮流がどのようなものか学ぶことを目標にすることを決めました。

これに加えて素晴らしい機会となったのが、フェスティバルと国際交流基金アジアセンターの共催による、アジアTYAネットワークのネットワーキングのためのイベントでした。アジア10カ国からのTYAアーティストと関係者が、りっかりっかフェスタに招かれました。特に、東南アジアからの参加者は以下の2つのイベントに招待されました。

  • 「オープントーク:アジアTYAの今とこれから」では、各国のアーティストと関係者が、それぞれの国での現状について情報を共有する機会が与えられました。
  • 「アジアTYAネットワーキング」では、各国のアーティストと関係者が、自分たちの作品について発表する機会が与えられました。

まだ新しいフェスティバルであるBICT Festにとって、国際的な場と文脈の中で紹介されること、そして世界中のアーティストや演劇関係者と関係を構築することができたのは、素晴らしい機会でした。BICT Festの重要な目的の一つは、世界規模でのネットワークの構築とはまた別に、東アジア地域ですでに存在しているネットワークを広げることにあります。そのため、アジアTYAのネットワーキングのためのイベントは、我々にとってもう一つの理想的な機会でした。

BICT Fest 2016が7月3日に終了したばかりだったので、閉会後のさまざまな作業が山積みになっていましたが、それにもかかわらず、私たちはりっかりっかフェスティバルへの参加を心から楽しみにしていました。

沖縄への出発前に、私たちはいくつかやるべきことを決めました。

  • 依頼を受けたとおり、BICT Festに関する3分間のプレゼンのためのスライドを作成する
  • プログラムの組み方、組織、運営、会場など、りっかりっかフェスタが、大規模な国際フェスティバルをどのように成功裏に実施しているかを見て学ぶ
  • 児童・青少年のための演劇の現在の傾向について調べる
  • 2018年BICT Fest 2018 に招聘する可能性のある作品を見つける(可能であれば)
  • 世界各地、またアジア地域のTYA関係者と知り合う

初日から千秋楽までフェスティバルに参加できたこと、そして運営側の方々や、劇場や会場のスタッフのお仕事を見ることができたのは、大きな意義のあることでした。世界各地から集まった多種多様な作品を観ることができ、フェスティバルのイベントや集まりにも参加することができました。始まったばかりのフェスティバルを運営する身として、この体験はとても刺激的で、多くの意味で興味深いものでした。今振り返って考えると、今回のフェスティバルの体験をもとにした個人的な意見と印象としては、りっかりっかフェスタの成功は以下の要素によって達成されているのではないかと思います。

  • キューレション: 家族向けのものから、アバンギャルドなパフォーマンスまで、非常に幅広い、質の高いプロフェッショナル作品が世界各地から集められており、属性や年齢、作品に期待するものなどの違いを超えてさまざまな観客にとって魅力がある。
  • TYAコミュニティーの基盤/ネットワーキングの機会:アジア児童青少年演劇フェスティバル・ネットワーク(ATYA)、アジアTYAオープトークおよびネットワーク、ベルギーフォーカス、アジア共同制作など、アジアおよび世界のTYAアーティストと関係者のために出会いとネットワーキングの場をもうける試み。
  • 組織/運営:非常に高いプロ意識と、リラックスした姿勢。

キューレション

プログラムは、公式プログラム(招聘アーティストおよび劇団)とフリンジ作品(自主参加劇団による公演。自主参加劇団は、経費を賄うための資金集めを各自で行う)で構成されました。今年のりっかりっかフェスタでは、ベルギー、スペイン、セルビア、フランス、スウェーデン、ドイツ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、韓国、日本の作品の公演が行われたほか、インドネシア、フィリピン、韓国、ベトナム、オーストラリアのアーティストのコラボレーションによるアジア共同制作作品も上演されました。

約30の作品のうち、私は12作品を観劇することができました。もっと多くの作品を見られなかったことを残念に思っています。各作品の観客数は約50人で、これよりも少ない作品が数作品、多い作品(150人から200人)が数作品ありました。私はもともと、ノン・バーバル作品に興味があったので、これに基づいて観劇する作品を選びました。パペット、ストーリーテリング、マイム、サーカス、ダンス、マルチメディア、インスタレーション、サイト・スペシフィック、古典的ムーブメントの再解釈(adaptation of classics movement-based)や、インタラクティブなパフォーマンスなどを含む素晴らしいラインアップでした。家族向けのもの、エンターテイメント作品、商業作品、豪華なショー、アバンギャルドな作品などさまざまで、内容も喜劇、悲劇、シュールリアル、挑戦的なものまで多岐に渡りました。私は、これほど多種多様かつレベルの高い作品が集められていることに感銘を受け、 これほど大規模なフェスティバルであるにもかかわらず、りっかりっかフェスタは観客を喜ばせるだけでなく、疑問を投げかけることにも成功していることを感じました。

セリフのある作品も、いくつか鑑賞しました。翻訳をどのように処理しているのか知ることは有益であり、またそのような作品にどのような観客が集まるのかも知りたかったからです。私が観た日本語の作品では、翻訳は提供されませんでした。これはおそらく、りっかりっかフェスタの観客が主に日本人だからでしょうか。それでも、劇場スタッフの中に、中国語を話す人が大勢いたことから考えて、台湾や中国から来ている観客も多くいたであろうと思います。

公演は那覇市の事務局周辺の地域で、複数の会場で行われ、ほとんどが徒歩圏内でした。一番遠いものでも、モノレールで数駅の距離でした。メイン会場は沖縄県立博物館・美術館で、その他に教会、学校、新都心公園、コミュニティーセンター、文化センター等が利用されました。

アジアTYAネットワーク

TYAコミュニティーの基盤/ネットワーキングの機会

BICT Festにとって、今年のりっかりっかフェスタで一番大きかったハイライトのひとつは、東南アジアの他のTYA関係者に出会う場となったことと、アジアTYAネットワークのメンバーとして招かれたことでした。先述の二つのイベントを通して、私たちは、フィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ラオス、ベトナム、カンボジア、タイ(Semathai Puppetry Troupe)のアーティスト、関係者、フェスティバルに出会うことができました。また、台湾や中国のフェスティバルについても知ることができました。オープトークとネットワーク・イベントをとおして、TYAの現状について情報共有をすることができ、また各国でのシーンについて、最新情報を得ることができました。私たちは、自分たちの懸念や希望について語り、それぞれの国で政治や芸術的探求に関わるそれぞれのニーズがあることを理解しました。また、主に金銭的リソースと人的リソース(スキルと専門知識)の欠如という同じ問題を、皆が抱えていることも知りました。こうしたイベントを通じて、将来的なコラボレーションや協力関係に向けた対話が始まったと思います。

東南アジアでは、興味深い国際フェスティバルのあり方がいくつか育ちつつあります。レベルの高いプロフェッショナルな作品を見せることに焦点を当てているフェスティバルもあれば、アーティストの成長とコミュニティーの基盤を造ることに焦点を当てるフェスティバルもあります。私は、Yogjakartaでペーパームーンが隔年で開催しているフェスティバル、Pesta Bonekaにとても興味をもちました。アートを共有し、異なる文化背景をもつアーティストがパペット作品を通じて絆をつくるというコンセプトは、とてもユニークで美しいもので、これは世界中で実施可能な、強固な仕組みだと思います。このように、最近の顕著な傾向は、プロセスの重要さに重きを置くことと、どのように国境を越えてコラボレーションを成功させるかを考えるところにあるようです。特に私たちにとっては、BICT Fest 2016で公演をしてもらったペーパームーン・パペット・シアターとりっかりっかフェスタで再会することができたのは、大きな喜びでした。

もうひとつのイベント、ベルギーフォーカス(ベルギーと日本の国交150年を祝うため、りっかりっかフェスタ2016では「ベルギーフォーカス」として同国から5つの優れた作品を招聘しました)は、私にとって特に興味深いものでした。ベルギーはTYAが盛んなことで知られる国だからです。ここでは、ベルギーの多種多様な、高レベルの作品を観ることができ、また作品についてアーティストと劇団が語るのを聞くことができた上に、何人かのアーティストとは作品について直接話をすることもでき、とても刺激的な素晴らしい機会となりました。

りっかりっかフェスタによる『小さな紳士』のアジア共同制作は、環太平洋地域と日本の演劇関係者の間で知的な対話を交わし、スキルを互いに伝え合うためのスペースを作る試みとして、成功裏に終わりました。国際的なコラボレーションのための場を提供する意味で、成功した試みでした。

また、他のフェスティバル関係者や、アジア地域外の劇団にも出会うことができ、素晴らしい刺激を受けました。

アジアTYAネットワーク

組織/運営

フェスティバルの成功とは、プログラムの質だけでなく、どのように観客に作品を届けるか、また、フェスティバルの運営に関わる人々にかかっていると思います。りっかりっかフェスタ2016の運営は非常にプロフェッショナルなもので、事務局でも劇場でも、非常に高い計画性を持って管理が行なわれていると同時に、リラックスしていておおらかで、親しみやすく温かい雰囲気がありました。これは、このような規模のフェスティバルでは実現するのが非常に難しいことだと思います。BICT Festのメンバーは皆、滞在中ずっと非常に丁重にサポートをしていただいていると感じました。スタッフとボランティアの皆様にお礼を申し上げたいと思います。それに加えて、プログラムが掲載された冊子の情報がとても明瞭でわかりやすく、また観客のために劇場への行き方を示した道案内盤が市内のあちこちに掲示されていました。沖縄においてりっかりっかフェスタがどれほど重要なものかが、ここからもよくわかりました。

ひとつ気づいたことは、海外の作品のほとんどでは子供よりも大人の観客が多く、日本の作品では子供のほうが多いということでした。これは、りっかりっかフェスタが沖縄市から那覇市に開催地を変えたことに関係があるかもしれません。地元とのより強いつながりを、時間をかけて築いているところなのでしょう。

BICT Festチームを代表して、りっかりっかフェスタと国際交流基金アジアセンターの皆様に、今回ご招待いただき、私たちをサポートしてくださったことにお礼を申し上げたいと思います。皆様にBICT Fest 2018 に来ていただけることを心待ちにしております。

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タ イ
BICT Fest
フェスティバルディレクター
りっかりっか*フェスタ参加者