Mr. Liew Kung Yu & Ms. Koe Gaik Cheng (マレーシア)
アジアTYAネットワークの視察訪問の第2弾として、私たちはカンボジアに到着し、シェムリアップ、バタンバン、プノンペンの各都市で活動している代表的な人たちとの面会をするべく動き始めた。
過去の視察訪問と同様に、この小旅行の目的は、その国の状況を知り、ネットワークを広げるための更なる可能性を探求することだ。
カンボジアのTYAの進歩は、私たちが過去に訪問した国(シンガポールとマレーシア)とは異なる。
内戦の悲劇的な歴史と “キリングフィールド”として世界中に広く知られている何百万ものカンボジア人を死に至らしめた悲劇的な大量虐殺のためである。
事件から40年経った現在でも、クメール・ルージュの全体主義体制の影響は、国の歴史や文化とのつながりを事実上分断し、つい10年くらい前までは、国の発展に停滞をもたらしていた。
現世代のカンボジア人は自分自身を「何も書かれていないカンバス」とみなしている。しかし、ひとつの好機とも言えよう。若者が芸術に飢え、彼らの伝統を再発見し、新しい芸術形態を切り開く道を探しているからである。
しかしながら、広範囲にわたる貧困や、政府の関心の欠如によって、概して文化に対する支援はほとんどなく、NGOや社会事業に頼らざるを得ない。似たような理由で、そのような努力は、若い観客を育てるよりも、観光を誘致して利益を生めるような、メジャーな芸術を発展させることに主に向けられている。
会場: Café at Angkor Century Resort & Spa, Siem Reap
会った人: (我々のコーディネーター)
会場: Bambu Stage, Wat Damnak Village, Siem Reap
会った人:
- Nick Coffill (Bambu Stageクリエイティブディレクター)
- Sorn Soran (Bambu Stage人形師)
Tangram Garden Restaurantが主催するBambu Stageには、2つの重要な優先事項がある。 第一に、カンボジアに影響を与える歴史、文化、問題についての認識を変えること。 第二に、専門的で芸術的なコラボレーションによって地元の才能を育むこと。
会場として, Bambu は毎週3つの作品を上演している。
1)Angkors Temples De-coded: 寺院の謎と構造を通して、観客を精神的な旅に誘う双方向のマルチメディアプレゼンテーション。
施設: 会場には影絵人形劇の為の野外スペース、「 Angkors Temples De-coded」と「150 years of Photography in Cambodia」のための半屋内スペース、レストランなどがあり、150人収容の新しい劇場がもうすぐできる予定である。
会場: Wat Damnak Pagoda, Siem Reap
会った人:
もうすぐ11年に入るジャイアントパペットプロジェクト(The Giant Puppet Project)は、シェムリアップの恵まれない子どもたちのためのプログラムである。このプロジェクトは、子どもたちによって創作され、たとえば、交通安全、絶滅危惧種、衛生、地元文化への理解、環境意識など、教育的、文化的、生態学的な独自のテーマを持っている。
このプロジェクトには、違うNGO(約18)からの約600名の子どもたちが参加し、彼らはPhare Visual & Applied Arts Schoolsからのアーティストと共に2週間の長いワークショップに一緒に参加し、大きな人形を作り上げる。
特筆すべきこと:
会場: Rehearsal space at Cambodian National Youth Centre, Siem Reap
会った人:
NCAはダンスを通じて女性を力づけようとする信念を軸に集まった若いカンボジアの女性たちのグループに率いられたユニークな、革新的なダンスカンパニーだ。彼らは作品を通して、国内の、また、国外の観客にカンボジアの文化と、その様々な面と可能性をより広く考えてもらうきっかけを作っている。
NCAのメンバーは次のような分野で自己研さんをするために活動しているーコンテンポラリーおよび古典的なダンスと振付、地域の、そして国際的な文化の歴史、舞台演出、教育と指導、英語のスキル。
カンパニーは成長し続けることを希望していて、もっとダンサーを増やして、国際的な規模で、カンボジアの代表的な地域と同様に、人々が舞台芸術に触れる手段を持たない地方エリアにもツアーを行っている。
特筆すべきこと:
会場: Phare Ponleu Selpak, Anh Chanh Village, Battambang
会った人:
Phare Ponleu Selpak (PPSA)
Phare Ponleu Selpak (PPSA) 、別名「芸術の光」は、1994年から、芸術学校や、教育的なプログラム、社会的支援などを通じて、児童青少年とその家族の生活を改善しようとしているカンボジアの非営利団体である。
クメールルージュの崩壊後、難民キャンプから帰ってきた9人の若者によって1994に設立された。今日、1200人以上の生徒が毎日公立学校に通っていて、500名が職業訓練プログラムに参加している。
そのカリキュラムの中で、学校では幼稚園から12年生(高校3年生)までの教育、ヴィジュアルアート(イラスト、絵画、グラフィックデザイン、アニメーション)、音楽、ダンス、サーカスなどの分野での専門技能教育が行われる。
すべてのプログラムは無料であり、資金はPPSE(以下参照)や国際的な支援によりまかなわれている。
Phare Performing Social Enterprise (PPSE)
自給自足の必要性を認識し、PPSAは2013年に設立された。PPSAは社会的企業で、その第一の目的はカンボジアのアーティストに意義のある雇用をもたらすことである。目標は以下の通り:
1)カンボジアのアーティストのための意義ある雇用の機会を創造する
2)PPSに信頼できる収入源を提供する、財政的に継続可能な社会事業を創造する
3)カンボジアの芸術界を活性化させ、国内外にカンボジアのアートを広める
PPSEの傘下には3つの株組織がある
(1) Phare, The Cambodian Circus (2) Phare Productions International (3) Phare Creative Studio.
Phare, The Cambodian Circus
Phare Productions International
Phare Creative Studio
• 2016年開始
• オリジナルコンテンツの作成:2Dアニメーション、グラフィックデザイン、イラスト
• 専門的な映像と音声の録音サービス
施設:
• 公立学校(小学校と中学校)
• 幼稚園
• ビジュアルアンドアプライドアートの学校
• Phare Creative Studio
• サーカス、演劇、音楽、ダンスの4つの部門を含むパフォーミングアートスクール
• カフェ
• Phareや他のNGO、社会的企業によるブティック販売製品
• 図書館
会場: 128-G9 Blvd Samdach, Phnom Penh
会った人たち:
私たちは「Cambodian Living Arts」の何人かの芸能実演家に紹介された。ディスカッションは彼らが、今はほとんど消えてしまったカンボジア伝統の歌やダンスの形である“Yike”をよみがえらせ、現代の観客向けに新たに創るにあたって、現在どのようなことに取り組んでいるか、どんなチャレンジをしているかが中心となった。
会場: Café, Teahouse Asian Urban Hotel, Phnom Penh
会った人:
Sophiline Arts Ensemble (旧 Khmer Arts Ensemble) は拠点をカンダール州タクマオのクメール・アーツ・シアターに置く、国際的な名声を持つ古典ダンスと音楽のカンパニーである。このカンパニーは実験的な作品と、クメールの古典ダンスの両方の生徒を養成している。
このカンパニーは主に、芸術や文化イベントに関わろうとする意欲を喚起するために、若いカンボジア人(例えば大学生や最近登場してきた、高齢世代より若干収入が多い中間層)を対象にするべくがんばっている
特筆すべきこと:
会場: #37, Sothearos Blvd, 12301 Phnom Penh
会った人:
カンボジアの最初のメディア/アート/コミュニケーションセンターである「 META HOUSE」は 首都プノンペンのWat Botum Pagodaの南に2007年1月に設立された。国内外のメディアは、カンボジアの芸術文化の一番地として「 META HOUSE」を認識している。
設立以降ずっと、国際的な展示会、フェスティバル、ワークショップ、コミュニティに根差したプロジェクト、アーティストの交流プログラムを通して、また、東南アジアの人々や国際大学、ギャラリー、キュレーター、NGOや政府機関のつながりを育てることによって、カンボジアの新しいアートの動きの発達を促進するために精力的に活動している。
施設:
500平方メーターにおよぶ新しく建てられたセンターには大きなアートギャラリー、屋上の映画館、レストラン「アートカフェ」がある。「META HOUSE:カンボジアドイツ文化センター」はまた、ダンスや演劇そして音楽イベントはもちろん、NGOがワークショップやセミナーを開くことができるような公的なイベントに使えるスペースも提供している。
特筆すべきこと:
現在まで、ほぼ30000人の生徒たちがそのパフォーマンスに触れてきた。
カンボジアのインフラの限界をわかった上で、パフォーマンスは最小限の設備機材で成立するように作られており、2人の演技者しか必要とせず、教室の中で上演できるようになっている。
会場: #154, Street 369, Sangkat Chba Ampov Khan Chamkamorn, Phnom Penh
会った人:
Tiny Toones はスラムエリア内にある、学術的な授業(英語・クメール語・コンピュータ)そしてクリエイティブな授業(音楽、ダンス、美術)を学校が始まる前や放課後に行う子どものための施設である。
恵まれない層の多い地域の若者に安全な環境を与え、彼らのエネルギーを創作創造、美術や教育に向ける目的で誕生した。
センターには毎日スラム地区の子どもが100人以上、ダンスをし、ダンス音楽を作り、学び、子どもであることの自由を楽しむために訪れる。
施設:
特筆すべきこと:
会場: #166, Street 99 (Corner Street 484), Phnom Penh
会った人:
1993年に創設されたこの協会は、カンボジア文化の宝物というべきものを広めている。 会場は100人の観客を収容することができ、古典やコンテンポラリーダンス、伝統的なポピュラー音楽、ドラム、大小の影絵の人形、マスクダンス、サーカスなど、数々のエンターテイメントやプログラムを実施している。
施設:
特筆すべきこと:
カンボジアはASEANの中でも多くの困難を抱えている国の一つである。しかし、私たちはコミュニティが、文化芸術に対してとても情熱を持っていることに大きく感銘を受けた。私たちが会った代表者やNGOは主に子どもたちに関わる人たちであったが、明確に若い観客に向けた演劇はまだ実現していないように思った。
しかし、これはまもなく変化する可能性もあるだろう。その兆候もある。そして、アジアの中で急成長を遂げている国のひとつとして、青少年は、社会の急速な変化に立ち向かうために、より多くの支援とエネルギーを必要とするだろう。これは、骨の折れる戦いのように思われる。私たちがであったNGOの人たちは自分の活動を維持するのにやっとのようであったので。
これが、私たちのレポートの結論である。レポートを終えるにあたって、この場を借りて、以下の方々に感謝の意を表したい。