りっかりっか*フェスタ2016レポート

過去に会ったことがあった友人たちだけでなく、他の国々からのアーティストとも会いましたし、素晴らしい瞬間を共有できたことは、かけがえのない体験となりました。
Maria Tri Sulistyani (インドネシア)

りっかりっか*フェスタ 2016への旅 - 蝉の鳴き声に思い出して

青少年演劇の世界から遠ざかってしばらく経ちました。子どもたちが良質の芸術を体験できる機会を設け、他の人と違う存在でいられるチャンスを作り、自分自身のことをユニークな存在だと認識し、他の人のありがたさを感じるられるようにするために、2006年にペーパームーンを始めました。しかし、その方向性は1年もしないうちに変わりました。

2014年から、オーストラリアの劇団と協力を始めましたが、その目的は子どもと一緒に制作を行うことでした。それ以来、協力を続けてきましたが、その結果、私たち自身の作品制作にも大きな影響がありました。

子どもたちと一緒に制作することが、ペーパームーンの関心事項の1つになりました。しかし、もっとたくさんのことを学ばないといけないとも感じています。というのも、私たちが子どもたちの世界から遠ざかってしまってから時間が長く経ってしまっているからです。

2015年3月に私の子どもが生まれました。そして、疑問が立て続けに浮かんだのです。どうやったら、私の息子に良い作品を作って見せられるでしょうか? 生まれて17か月の子どもが演劇作品を楽しめるでしょうか? どんな作品なら楽しめるでしょうか? 息子を傍に置きながら制作できる作品はどんなものでしょうか?

そこに、りっかりっか*フェスタと国際交流基金からの招待が届きました。

当初は「なぜ私たち?なぜペーパームーン・パペット・シアターなの?」と大きな疑問を感じました。しかし、息子とペーパームーン・パペット・シアターの芸術監督である夫と一緒に参加することを決めました。というのも、この会議に出席することやりっかりっか*フェスタに参加することが、私たちの創作活動やアーティストとしての人生、そして親としての道のりに新たな旅の機会を作ってくれると知っていたからです。

人々との出会い

沖縄でのりっかりっか*フェスタの初日に、他の参加者と路上で会いましたが、これが私にとって火つけ役となりました。東南アジア諸国から集まった親愛なる友人たちと同じ道筋で会うことができ、とても嬉しかったのです。過去に会ったことがあった友人たちだけでなく、他の国々からのアーティストとも会いましたし、素晴らしい瞬間を共有できたことは、かけがえのない体験となりました。

上演作品鑑賞とフォーラム参加

今年のりっかりっか*フェスタについて私が大好きなことは、上演作品とフォーラムの質が両方とも同様に高かったことです。フォーラムのほとんどに参加しましたが、上演作品と同じくらい貴重なものだと思いました。フォーラムではロベルト・フラベッティ氏が紹介されていたベイビードラマについてたくさん学びましたし、また、セルビアから参加されていたダリア・アチン・テランダー氏がディレクターの「ベイビースペース」も体験しました。正直、乳児向けの芸術分野はそれまで体験したことがありませんでした。この体験には目を見開かされました。

「アジアTYAの今とこれから」と題されたフォーラムは、たいへん興味深いものでした。というのも、いくつもの点を議論する機会があったからです。マッピングを行うというアイディアも面白く、アジアの多くの国々でTYAが発展していることを見てとることができました。

しかし、正直に申し上げますと、その瞬間には他の名称を挙げられないと感じました。というのも、私自身はTYAだけに注力しているわけではありませんので、TYAについて情報をたくさん逃してしまったに違いません。

メモ: フェスティバルに参加する前の段階から、アジアTYAフォーラムでアジア諸国でのTYAのマッピングを行う必要があると知らされた方が良いかと思います。それに向けて、準備できるからです。

アジアTYAネットワーキングも素晴らしい機会でした。というのも、フォーラムに参加していた多様な人々に会うことができたからです。とても時間が過ぎるのが早いように感じられました。というのも、参加者は本当に多くの情報を共有したいと思っていたからです。参加者の中には、彼らの実践内容や青少年演劇分野に関する視点について話すためにスライドの準備ができていない人もいて、正直、少し困惑しました。ひょっとすると、話す内容について少し案内が必要だったのかもしれません。説明が、参加者がこれまで何年も行ってきた活動をただ示すだけでなく、あるテーマに特化したものになるように、案内があった方が良かったのかなとも思います。

フォーラムの中で私のお気に入りのセッションの1つは、最終日に行ったまとめのディスカッションでした。りっかりっか*フェスタの全体像が見えてなかったのですが、最後の最後で情報を得ることができました。このフォーラムはお互いの距離がより近く感じられ、話したかった「アジアでフェスティバルを実施する」というテーマについてディスカッションを行うことができました。この緩やかな枠組みのフォーラムを通じて、異なる背景を持つさまざまなフェスティバルについて学び、議論が終わった時には、参加者の間の絆がさらに強まっていました。そして、りっかりっか*フェスタでのアジアTYAフォーラムが本当にうまく機能していると感じました!りっかりっかはプロデューサーが作品の買い付けに来るだけの場所ではなく、私たちは絆を築き、友人を作り、繋がりを生み出していたのです。

りっかりっかの上演作品を1人で、また、息子や夫と一緒に鑑賞しましたが、1週間にわたってそうする中で、親は子どものニーズに合わせて動くということをお互いに理解しました。私たちはりっかりっか*フェスタでの上演作品のほとんどをどうにか鑑賞することができました。
私にとっての目玉作品は「ロウ〜小さな魂〜」「寿歌」と「ア・マノ」でした。

子ども向けのフェスティバルで「ロウ〜小さな魂〜」のような演劇作品を鑑賞できたことは、私と夫にとって大きな驚きでした。とても力強いアイディアで、展開された舞台を見て息が止まりました。私は「子どもたちが楽しみ、娯楽に興じ、子どもたちのニーズに合わせて全てが提供される場所であるこのような子ども向けのフェスティバルで、恵まれない子どもについて考えるのか」と自問していました。

「寿歌」は日本の作品で、日本語で上演されましたので、私は言葉を理解することはできませんでした。しかし、その作品の全場面が始めから終わりまで大好きです。こうした良質の作品には字幕があれば良いのにと思います。また、この作品が国際フェスティバルで上演されていることを踏まえても、強いメッセージが発せられていたように思います。日本のアーティストが上演しているという点が、私が本当にこのフェスタに来たくなる理由の1つなのです。

「ア・マノ」は甘美で温もりのある作品で、このフェスティバルの中でも大好きです。この作品は大人の心の奥底に触れるものだったと言えると思います。

作品上演について

アーティストと会って話す機会が特別に設けられていませんでした。彼らの多くはフォーラムに出席しませんでしたので、話すことができませんでした。もし、アーティストと話し、彼らのプロセスについて聞ける機会が今後はあれば良いなと思います。

これで私の報告書はお終いです。

沖縄にお招きくださいまして、ありがとうございました。青少年演劇の世界に呼び戻してくださいまして、ありがとうございます。

今、呼びかけの声が聞こえます。青少年の観客向けの作品に戻る必要性は沖縄で聞いた蝉の声と同じくらい大きいのです。

またお会いできればと思います。

ありがとうございました。

ペーパームーン・パペット・シアター (インドネシア) 創設者・共同芸術監督

Ria
www.papermoonpuppet.com

りっかりっか*フェスタ参加者
Maria Tri Sulistyani
インドネシア
Papermoon Puppet Theatre
ディレクター
りっかりっか*フェスタ参加者