りっかりっか*フェスタ2016レポート

フェスティバルの劇が青少年と大人の観客の両方にアピールしているのは本当に良い戦略だと思いました。
Chen Yoke Pin (マレーシア)

プログラミングとキュレーション

上演作品は、とても人気があり観客を数多く集めるものから、穏やかで抽象的なもの、そして、日本の観客の通常の選択に挑戦するものまで、良い形で混ざっていました。このプログラミングによって、頻繁に演劇を見に行く人々から新しい人々まで様々な層の観客がひきつけられていました。

海外からのゲストもフェスティバルに先立って、子供たちや学校、家族向けに実施された現地でのワークショップに参加できていれば良かったでしょう。というのも、双方向的なプログラムに参加することは、作品の上演を見るのと同じくらい価値ある経験になっただろうからです。

また、上演団体の全てでなくとも、いくつか選んだ団体に対して、観客の青少年・児童と共有したり、交流したりする機会やフェスティバルに参加した他の実践者たちとワークショップを行う機会を設けていれば良かったでしょう。

それに関連して言うと、ワークショップやシンポジウム、フォーラムや公開討論会などがより多くあれば、観客と演劇実践者の励みになったことでしょう。とりわけ、これほどまで多くの国々から演劇関係者が集まる機会は稀なのですから。

上演された作品の中には、地元の日本人の観客の受け止め方が気になった作品がありました。文化的な文脈の違いを考慮すると、(非言語作品であるという基準以外で) プログラミングと外国作品選定の背景にはどのような意思決定の流れがあったのか興味をそそられました。また、地元の観客や文脈に適しているかどうかという基準があったのかも気になりました。

アジアTYAネットワーク

宣伝

フェスティバルの宣伝が那覇市内では広告や垂れ幕で行われているのが明らかで、地元の市場やショッピングモール、モノレール駅などどこでも目にすることができましたが、沖縄の市街部以外のコミュニティに対してはどのように情報が届いているのか考えざるをえませんでした。

プロダクション
私が鑑賞することができた作品のプロダクションは全てとても円滑に進んでいるようでした。上演会場は温もりの感じられる形で設定されており、観客は出演している役者の間近にいることができました。しかし、改善点としては、観客席列の間の空間を大きくして、観客の快適度を上げることでしょう。
ボランティアの人々はとても頼りになり、統率がとれていました。また、とても若い人々を含めて様々な年齢層の方が参加されているのは明らかでした。台湾など海外からボランティアとして参加されている人もいました。こうした年齢層の人が参加することで、若手のアーティストや観客が演劇に触れることを促進します。

観客

私が期待していたよりも、大人の参加度合が高かったです。フェスティバルの劇が青少年と大人の観客の両方にアピールしているのは本当に良い戦略だと思いました。というのも、これによって世代を超えて絆とコミュニケーションが生まれるからです。

アジアTYAネットワーク

アジアTYAネットワークの目的とメンバー

沖縄で開かれた2016年のアジアTYAネットワークは、活発に活動する演劇関係者が一緒に集まって互いを知るプラットフォームを作る上で良い第一歩でした。このネットワークには、まだ参加していないグループやイニシアティブをさらに多く加える必要があります。というのも、東南アジアで活発に活動する演劇関係者をマッピングする活動は今年のネットワーキング・セッションで初めて開始したばかりだからです。

東南アジアの青少年向け演劇 – 少し異なったアプローチ

フェスティバルに東南アジアから参加した人々の多くは、青少年向けの演劇に関して経験をたくさん持っていました。青少年向け演劇の上演準備を行うことについてだけでなく、演劇やその他のさまざまな芸術を使ってそれぞれの国で社会課題に取り組むことについても経験を持っていました。したがって、東南アジアのグループの多くは社会課題に取り組む芸術やコミュニティに関与する芸術に傾倒しているように思えました。多くのグループが演劇だけでなく、他の芸術形態も使っていたほかに、観客の青少年を芸術制作に関与させていました。

青少年向けの芸術、青少年と取り組む芸術、青少年による芸術が強調されているように思いました。こうした種類のアプローチを行っているグループは、必ずしもフェスティバルを実施していません。アジアTYAネットワークでは、フェスティバル向けの演劇が重要な焦点となっていて、こうしたグループはネットワークの現状の条件や規制に完全に合致できません。

今後

演劇関係者との1週間にわたる交流を通じて、次のミーティングでさらに議論すべき点が幾つか出てきました。
東南アジアから3カ国を選び、調査のために訪問します。これは、2段階目のフォローアップ・プロジェクトとして計画されました。
プラットフォームとしてのレジデンシー。これは様々なグループが用いているアプローチをより良く理解することを目的に、より長期かつ掘り下げた交流プログラムを行うために提案されました。多様な領域での交流を考えることができ、プログラミングやマネジメント、制作、コンテンツ制作やメソドロジーなどが強調されました。

りっかりっか*フェスタ参加者
Chen Yoke Pin
マレーシア
Arts-Ed
シニアマネジャー
りっかりっか*フェスタ参加者