りっかりっか*フェスタ2017レポート

私自身の演劇に対する理解を深め、新しい知識を与えてくれるこのネットワークにこれからも活発な参加者として関わり続けていきたい。
Ariyo Zidni (インドネシア)

2017年7月に、私はインドネシアを代表しアジアTYAネットワークプログラムに参加した。これは私にとって素晴らしい機会で、貴重な体験となった。2013年からジャカルタで毎年開催しているストーリーテリングフェスティバルのディレクターとして、アジアTYAネットワークに参加することは大きな学びの体験だった。2018年には私たちは自動青少年のための人形劇を含めたフェスティバルを立ち上げることを予定している。

アジアTYAネットワークでは、りっかりっか*フェスタのさまざまな舞台作品を鑑賞し、さまざまなバックグラウンドをもった他のアジアTYAネットワーク参加者と出会い話をし、そしてフェスティバルに参加するアーティストやパフォーマーから直接学ぶ機会を得た。

私にとって、りっかりっか*フェスタはすばらしいフェスティバルである。フェスティバルを主催するACO沖縄のスタッフから、ボランティアの皆さんまで、みなさんとてもフレンドリーでコミュニケーションもとりやすかった。

フェスティバル自体もきちんと運営されていた。個人的な経験から、フェスティバルを行うのは簡単なことではないと知っている。しかし、このフェスティバルは本当に素晴らしく運営され、フェスティバル中のすべてのイベントはスムーズに行われていた。那覇市内のさまざまな場所で上演するのは、公演にとても良い雰囲気を与えていて新鮮だった。本当に沖縄の人々によって行われているフェスティバルに参加しているのだ、と感じた。また、街についてより深く理解することもできた。市内各所で行われる公演と、フェスティバル中に学んだこの土地の持つ背景や文化により、この街の魅力を強く感じるようになった。

このレポートの中で、いくつかのトピックに触れていきたい。

[作品]

観客が会場に来て観るものである。そしてこれが私がりっかりっか*フェスタ期間中に行ったことだ。まず、私は公演を見ながらそこにいる一人の観客として作品を楽しんだ。次に、私は視点をターゲットとする観客に移した。そうすることで、より大きな意味で作品を観ることができた。それによって、私はTYAのさまざまな側面について理解し、学ぶことができた。

赤ちゃんを対象とした作品をいくつか観る機会があった。これは私にとっては違う印象を与えるものだった。乳幼児のための舞台作品を観たのは今回が初めてで、私自身あまり楽しむことのできない部分がたくさんあった。しかし、視点を変えてターゲットである観客として観てみたところ、より深く理解でき、作品自体も楽しむことができた。ストーリーや音楽、照明など、作品の意図するところを感じることができた。大人としての自分ではなく、異なる視点を意識して作品に向き合うことでこれは可能となった。

[観客]

りっかりっか*フェスタで、ひとつとても気になったことがあった。世界中からすばらしいパフォーマーが集まり、すばらしいパフォーマンスを見せるこの世界的なフェスティバルにあって、基本的なものが欠けていた。それは観客である。

私はストーリーテラーであり、脚本家や俳優としてアマチュアの公演に参加したこともある。私の経験はTYAのパフォーマーの皆さんに比べたら何にもならないが、ひとつ気づいたことがあった。客席が、その作品の意図する観客で埋まっていると、その作品を見る体験自体が違うものになるということである。

りっかりっか*フェスタでは、多くの作品で子どもたちの観客が少なかった。多くの観客が大人である環境は奇妙に感じた。作品自体を楽しめるか楽しめないか、という部分には関係のないことだったが、子どものために作られた作品を、子どもよりも大人が多い客席に座って見ているのは変な感じがした。

私がもし上演をしているパフォーマーだとして、客席に大人(年配者だったり、プログラマーだったりTYAネットワーク参加者だったり)がいることは公演自体に影響を及ぼすことはないだろう。しかし、作品がターゲットとする観客ーこの場合は子どもたちーが多くいる場合、自分の作品がより良いインパクトを与えている、と感じることはできると思う。

[スペクタクル]

演劇のスペクタクルは、観客のために作られたストーリーや世界観をより強いものにするためのさまざまな要素によって作られる。作品のストーリーは間違いなく力強いものでなければならない。しかし演劇体験の質はこのスペクタクルによって決まる。りっかりっか*フェスタでは、各カンパニーによるさまざまなセットや衣装、特殊効果を観察した。

フェスティバルに招待されたすべてのカンパニーは選ばれた人たちだということは明らかだった。また、この分野で名前の知られているカンパニーを呼ぶということも意識されていた。それぞれの作品はそれぞれがストーリーからスタイルまで強い個性を持っていた。

これらの力強い作品は、ターゲットとなる観客にとって有益なものであり、若い世代にとってより魅力的なものであったと思う。さらに、こういった若い観客たちは作品が伝えようとするメッセージをより深く理解することができるだろう。私自身一番衝撃を受けたのは、『グッバイ、ミスターマフィン』と『アナのはじめての冒険』、『アイ オン ザ スカイ』、そして『アゲイン』であった。これらすべての作品は異なる強さを持っていて、どれもユニークで魅力的だった。舞台のセッティング、照明、音響、衣装から特殊効果まで、すべて作品のテーマやストーリーをより強いものにしていた。

作品の質というものが非常に明確に感じられた。児童青少年の観客のために作られた作品でも、作品の質を高めるためにさまざまな要素が込められているということを理解することができた。若い観客たちにとっても、質の高い舞台を通して初めての芸術体験をすることを可能にしている。

りっかりっか*フェスタを通して、フェスティバルの運営の仕方も学んだ。パフォーマーの視点を通して、フェスティバルを運営するためのさまざまな基本的要素を学んだ。それに加えて、国外のパフォーマーからもたくさんのことを学ぶことができた。このフェスティバルは基本的な演劇の要素(台本、プランなど)を組み合わせて素晴らしい作品のコンセプトを作り出すこと、そのコンセプトを観客、特に子どもたちに届けるためのプロセスについてより理解させてくれた。東アジア、東南アジアのTYAパフォーマーやオブザーバーなどの関係者と出会うことでネットワークを広げられた。インドネシアでTYAフェスティバルを立ち上げようとしている自分にとって、これは利益だった。

アジアTYAネットワークはこの分野で活動するたくさんの人に出会い、コラボレートする機会を与えてくれた。私自身の演劇に対する理解を深め、新しい知識を与えてくれるこのネットワークにこれからも活発な参加者として関わり続けていきたい。

私の次の挑戦は、このアジアTYAネットワークのメンバーとコミュニケーションを続けていき、他のメンバーと知識や経験を共有していくことである。また、よりたくさんのことを学ぶために、このネットワークが行うイベントにも参加していきたい。

ACO沖縄と国際交流基金アジアセンターに感謝を込めて。

Mochamad Ariyo Faridh Zidni
Indonesia

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Ariyo Zidni
インドネシア
Ayo Dongeng Indonesia Community
ディレクター
りっかりっか*フェスタ参加者