調査訪問報告書ーTheatre for Young Audiences (TYA) マレーシア、クアラルンプール[2016年11月24日]
マレーシア
Caleb Lee26/12/16

国際交流基金アジアセンターからの支援によるマレーシアのクアラルンプールにおけるTYAの創造的そして文化的現在の調査訪問は、とてもタイムリーかつ有益なものでした。特に、シンガポールと比較してクアラルンプールで活動するアーティストたちの社会政治的地位を調査するための有効なケーススタディーを得られました。日帰り訪問にはKuala Lumpur Performing Arts Centre (KLPAC)、Pearl Centre Shopping MallにあるPlay Haus、そしてマレーシアで実践している様々な分野の方々とのTYAアーティストネットワークセッションが含まれました。このセッションはクアラルンプールの国際交流基金より支援を受けました。

文化、アイデンティティーそして言語

シンガポールとクアラルンプールの共通項の一つに両国における文化の多様性があります。歴史的そして政治的文脈により両国は多文化社会であり、その結果としてシンガポールとクアラルンプールで行われたTYAセッションでは言語のトピックが主な論点になりました。シンガポールではTYAの実践者は大半が一言語(例えば英語、中国語もしくはマレー語)を使用した作品を作り、教育政策と国家の建築議題の転向により教育的アプローチを伴っていました。これらの作品は殆どが学生を対象としておりました。一方でマレーシアでは、TYAの実践者が、個々のカンパニー/グループが自分の観客を対象とした、コミュニティベースのアプローチを取る傾向がありました。これは実践者がしばしば、自分たち独自の“言語”を共有するコミュニティの中で作品づくりがなされ、同じ分野の他の実践者達の作品を必ずしも承認しない事を意味しました。これはまた、実践者が、特定のグループを対象に内容や主題を特に注意を払って決定している事も示しました。例えば、Play Hausの設立者、Linda氏は、作品内で取り扱われるテーマのいくつかは、世代を超えて共有できるものや親孝行、個人の才能など、中国語を話すコミュニティにより重点が置かれているものがある事を話していました。

テクノロジーの向上とグローバル化により子供の文化が急速に変化し、消失しつつある文化的アイデンティティと文化を保存する事への僅かな不安もまたあるようでした。両国共に若い世代の観客に自分たちの遺産や伝統、アイデンティティを気付かせる為には、言語が有効な戦略であるように感じられました。

財政、助成金そして空間

団体にとって財務上における挑戦が最優先される懸念である中で、クアラルンプールにはTYAカンパニーの活動場所の確保の可能性や利用のしやすさがあることを学んだのは勇気付けられました。シンガポールでの状況はまるで違い、ほとんどの劇場空間は主に国営で、いくつかのアートグループによって共有されています。しかしながら、クアラルンプールのTYAアーティスト達は政府からの助成金援助がほとんどなく、助成金確保が困難である事を指摘していました。その結果、カンパニーは少額の助成金を収集する独創的な方法に頼りました。例えば、世界中の文化の研究をガムラン音楽を使うという独特な内容から、Rapsodi Gamelanは、Krishin Jit Astro Fundの支援によって最近設立されました。Think Cityもまた、より地域に密着した内容を発展させ、コミュニティと繋がり、アーティスト達と作業する事で、クアラルンプールを創造都市へと発達させていく意図を話していました。クアラルンプールには芸術、文化、遺産を奨励する(TYAだけに限定されず)助成金がいくつかあります。

国際交流基金も日本とアセアンの国々の文化的、芸術的つながりの橋渡しを助長する企画を支援する旨を言い添えていました。

フェスティバルとパートナーシップ

今回の訪問の最重要点の一つに、Gaik Cheng氏の協力によりKung Yu氏(芸術監督)がTYAフェスティバルを設立する意向がある事を確認することでもありました。2017年の初めにペナンを基盤にフェスティバルが開催される予定ですが、TYAのコミュニティの中でフェスティバルの重要性を強調する発展性が見られたことに心強いものを感じました。しかしながら、助成金と“質の高い”作品の欠如からとても困難であったことをKung Yu氏は話していました。マレーシアのTYAの現在の位置が、要求されている“芸術的スタンダード”に到達していない事を彼は強く感じていました。もちろんこれはとても主観的です。彼は国際交流基金と共に、選出されたTYAアーティスト達に国際フェスティバルでの機会を与え、TYAの理解を国際レベルで広めていけるよう提案されていました。

シンガポールでのTYAアーティストの会合の結果、Kung Yu氏は、マスタークラス/ワークショップを行う為、キーとなる実践者達をクアラルンプールに招待する可能性も指摘されました。人形劇の技術向上の為にPaper Monkey Theatreの芸術監督のBenjamin Ho氏との創作を提案されました。シンガポールとクアラルンプールのパートナーシップへの最初のステップは両国にとって経済的により可能で価値のあるものであり、既成の作品の再演を行うプレッシャーを和らげることに繋がります。

全体を通して

TYAの分野の一プロデューサー/研究者として、この訪問は地理的境界線をまたがったTYAの分野の理解に価値のあるものでした。似たような文化的趣向から、パートナーシップとコラボレーションのモデルの可能性を見つけられました。また同様に両国の実践者がTYAの分野を左右する政治社会的構造や環境をより理解する事も重要です。劇場作品を招聘、または送出する事だけを考えるのではなく、創作の方法を探究する為、キーになる実践者を招聘したり対話を続けることで、より基盤からのレベルでパートナーシップを始めることを推奨します。それはTYAの分野を拡張する為の創造的相乗効果を見つけ出すより有機的な過程であろう事を信じています。

Linda氏の指導のもと、Play Hausがカンパニーを運営する為の若い監督やデザイナー、プロデューサーを支援して来たことが見受けられます。これは若い世代がTYAに関わっていく興味を示すだけでなく、若い実践者の創造性への渇望を提示します。シンガポールでは近年、監督らやNACが、継承に関わる問題への細やかな不安を語っています。これは、NACや実践者達にとって、この分野に関しての可能な戦略や支援を考えるのに有益なケーススタディや内省点になりえます。

また、NACのマスタープランにもあるように、TYAへのフォーカスと並んで、シンガポールが東南部における将来のTYAの活動の見込みある中枢地や出入り口として存在している事を述べる事は前向きであります。シンガポールには、局在的、そして地域的に成長を支援する為の素質と内部構造と資源がある事を信じています。また、TYA実践者がTYAへアプローチする新しい方法を探し出す為、シンガポールを超えて視野に入れる事を強く推奨します。

Writer’s Profile
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Caleb Lee
シンガポール
インディペンデントプロデューサー・リサーチャー
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